思考拡張日記。

日々感じたこと、学んだことを文章にしています。

働かずに生きる暮らし。『自作の小屋で暮らそう』 (高村友也 著 ちくま文庫)

誰にも文句を言われず好きなだけ寝ていられる。時間を気にせず好きなことが出来る。

これは永遠の夢なのではないだろうか。


そんなこと、定年退職後でないと実現不可だと、言われるだろう。


だが、それを今すぐ現実のモノとするために、たった10万円のコストで手に入れた男がいる。

その男は高村友也という。

彼は、東京大学哲学科卒業。慶應大学大学院哲学科博士課程単位修得後退学という、誰もが驚く学歴の持ち主だ。

これほどの頭脳を持った高村友也氏はその後、山梨の雑木林に10万円で小屋を建て、生活を始めた。

小屋の詳細は住宅のダウンサイジング:世界に広がる「スモールハウス・ムーブメント」とは何か : BIG ISSUE ONLINEで見れる。



なんのために始めたかといえば、好きなだけ寝て、時間を気にせずに好きなことをするためである。

【目次】

月に何万も払って家を借りるのは正気じゃない!

横になって寝るだけなのに、月に何万円も払って部屋を借りるなんて正気の沙汰ではない

これが小屋暮らしの出発点だという。

屋根と壁さえあれば暖かく寝られるのに、日本では現代技術の粋を集めた超高級家屋しか売っておらず、それらを買うための借金によって最悪の場合おちおち寝ていられなくなる。

安全に寝られる場所を確保するために、お金を多く稼がねばならない現代社会のシステムに高村氏は疑問を抱いた。


そこから抜け出すために、自分なりの生存システムを構築していくことに決めた。
そのシステムのことを「Bライフ」と呼んでいる。


ベーシックに暮らす(Bライフ)

Bライフとは、安い土地でも買って適当に小屋でも建てて住んじゃおうという、言ってしまえばそれだけのライフスタイルだ。

「そこ」に帰ってくれば最低限の生活が保障されている。でも最低限だから維持費なんて全然かからない、そんな自分だけの安全地帯を、低予算で、しかも完全に独力で構築する。

Bライフとは高度な技術、また多くの資産を必要とはせず、むしろ真逆のスタイルを保持している。

雨風、外敵の侵入を防げる空間を確保し、時給千円で1日働けば、向こう3ヶ月分の米と味噌を買える生活だ。

Bライフの家計簿

毎月の生活費は2万円あれば充分だという。

(内訳

年に25万も稼げば、最低限生きていける。あとは稼げば稼ぐほど、自由に使えるお金が増える。1ヶ月間集中して働いて、残りの11ヶ月間寝ていてもいいし、何かちょっと特技がある人や、インターネットで小遣いを稼ぐのが得意な人は、それすら必要なくなるかもしれない。

「25万なんて、1ヶ月しか生き延びられない!」なんて言う人もいるかもしれない。

豊かな国、時代であえて低い生活水準を保つことで、周囲との間に局所的な貨幣価値の格差を生み出すのが、Bライフの旨みともいえる。

食費は月1万でまかなえる

月1万円の食費があれば生命史上まれに見る高水準の食事が摂れるし、安物のカセットコンロ1つあれば死なないどころか大抵のものは作れる。

たくさん金を稼いでなるべく栄養のあるものを食べれば何かいいことがあるという妄想さえ捨てればいいと述べる。


時間を忘れて眠る

寝たい時に寝て、起きたい時に起きる。この「自由な睡眠」が可能な時点で、上質な睡眠はほとんど保障されているようなものだ。どれだけ高級ベッドと高級枕に睡眠グッズなるものを揃えたとしても、自由な睡眠とは比べ物にならない。

家賃も生活費も最低限の金額で済むとなると、睡眠は自由になる。
何時に寝て、何時に起きなければという縛りは一切なくなり。もはや時計すら不要物となる。

分からないことが分かる

既製品の家屋に住むのでなく、一から住む場所を作ることで、自分が何を分かっているのかが分かるようになったという。

素性の知れないものに囲まれていると、自分が分かってないことがまるで分かっているかのような装いで迫ってきたり、分かっていることと分かっていないこととの境が分からなくなってしまったりする。

感想

なんと羨ましい生活なんだと心底思えた。
ただ、自作で小屋を建てる敷居が高いと感じるのは間違いない。
しかし、著者はこれまでに一切DIYの経験はなく初めての試みだったそうだ。
人間やってみれば何でも出来るということなのだろう。また、その労力が充分に報われるほどに幸せな日々が待っているということで力を出せたのかもしれない。

10万円で小屋を建てられるといったが、土地代などを諸々含めると初期費用としては計100万円が必要となってくる。
土地の見つけ方、契約方法、計画といった具体的な話も最終章に出てくる。
本気で小屋暮らしを検討している人にも役立つ実践的な書物となっている。

不透明な世界を、どう生きていくか


私たちは素性の知れない物に囲まれた生活に慣れきってしまった。

例えば、今手元にあるスマートフォンだってその中身については何も知らない。
どの様な仕組みで自分の指が画面を操作しているのかなんて、知らなくても生きていける。

そんな不透明な世界で、何の疑問も抱かずに生きていくことは、本当は不利なのかもしれない。
だが、仕組みに飼いならされ、「そういうものだ」と割り切って生きることで納得している。

多くの家賃を払い生活したり、高額な家を建て、ローン払いに苦しみながら働くことに疑問を抱かない。それでいいのだろか。


社会の抜け道ではないけれども、少しでも自分の頭で考える習慣を身につけ、当たり前と捉えられているシステムに対して疑問を持つことで、生きやすくなっていくのではないだろうか。



自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ (ちくま文庫)

自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ (ちくま文庫)