思考拡張日記。

日々感じたこと、学んだことを文章にしています。

映画『Room ルーム』感想。 ネタバレあり。

ルームという映画を観た。
ルーム(字幕版)


17歳の時に知らない男に拉致されて、そいつの自宅の庭にある納屋に7年もの間監禁され続けていた女性の物語。

男からレイプされ、男の子を1人身ごもった。
そしてその男児、ジャックを納屋の中で女性は育てることにする。

映画としては、既にジャックが5歳になるところから始まるので、赤ちゃんの頃のシーンとかが出てくるわけではない。


食べ物などの物資は、男が定期的に納屋の中へ持ってくるが、望めば何でも渡してくれるわけではない。
また、非常に暴力的であり、いつ2人は殺されてしまうとも限らない。

そんな状況から脱するために、とある計画を企てる。

高熱を出し、嘔吐を繰り返してしまうほどにジャックがひどに病状にあるとの演技を行い、病院に連れて行ってもらおうと考える。ジャックにはメモ用紙を持たせ外の人間に宛てたメッセージを託す。

だが、1度目はその計画は失敗する。
男は、強い抗生物質を明日持ってくるとの言葉を残したのみで、すぐに去ってしまう。

そこで諦めるわけにはいかない。


今度は、ジャックの容態が悪化してしまい、ついには死に至ったという演技をする。

ジャックをカーペットでぐるぐるに巻いてしまい、見えないようにする。
そして、お前が助けてくれなかったせいで、この子は亡くなったんだ、その汚れた目で決してこの子の亡骸を見るなと忠告する。
男は了承し、遺体を破棄するために、外に持ち出し軽トラックの荷台に積み込む。


トラックが、信号などで停車する瞬間を狙い、ジャックは脱走する。

男はすぐに気付き、連れ戻そうと追いかけてくるが、犬の散歩をしていた人に、助けてもらう。

そこからようやく、ジャックと母親は救出されることになる。


これで2人はようやく幸福を掴めることになる。
と思いきや、そうはうまくことは進まない。

娘が消えたことにより、両親はうまくいかなくなり、すでに離婚していた。
父は、ジャックの男親が誘拐犯であることから、ジャックを受け入れることが出来ない。1度もジャックを見ようとせずに、去っていく。

世間からも、ニュース番組からのインタビューを受けても、なぜジャックを自分で育てようとしてのか、産んですぐに、どこか施設に預けようとは思わなかったのか、なぜ納屋で暮らすという辛い選択をジャックにもさせたのかなどとの批判を受ける。被害者でありながらも。
精神的に追い詰められ、自殺未遂までに彼女は至ってしまう。
だが、それでも2人は強く生きていくしかない。
人生を一度壊されてしまった過去を受け入れていきながらも。

無事に脱出できてよかったね、で終わらずにその後も辛い現実が待ち受けているリアリティがきつい映画だった。




またジャックは納屋が世界のすべてであり、それ以外のものは現実には存在しておらず、テレビのなかだけの作りモノであり、夢物語だと思っていた。
(納屋にテレビがあった。)
納屋の外側は宇宙であり、決して出ることができない、存在しない世界なのだとばかり考えていた。
その辺もすごくリアリティ溢れるリアクションだなと感じた。
生まれてこのかた、納屋のなかだけで過ごしてきたら、間違いなくそうなってしまうだろう。
そしてこの感覚は、程度は違えど我々にも多少は当てはまるのではないかと思う。

自分が認知できている世界、理解に至れることだけをこの世のすべてだと考える。
触れたことのない文化や伝統、習慣は受け入れることができない場合が多々ある。
私たちもそれぞれ、サイズの異なる納屋に閉じ込められているようなものだ。

外の世界は宇宙だと考えている。
その壁を乗り越え、ジャックのように脱出する勇気を持たなければならない。
そこには、素晴らしい世界が広がっているはずだ。
どんなに辛いことが待ち受けていようとも、選択肢の限られた納屋のなかで暮らしていくよりも、遥かに明るい未来が待っているはずだ。