そろそろ書評をしたい。
読書好きでありながら初の書評となる。
今回、僕が取り上げる本はこれだ。
『書き出し小説 』(天久 聖一 著)新潮社
本日書店で、何か面白い本は無いかと物色していると遭遇した。
まず、タイトル、カバーデザインに惹かれた。
タイトルの書き出し小説とはどのようなものかと興味がわき、また、カバーはデザイン性が高く手に取りたくなるものであった。
■書き出し小説とは?
書き出し小説とは、物語が始まる冒頭の部分のみで完結する小説のことである。
名作『雪国』(川端康成著)でいうならば、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」でお終いなのだ。そんな冒頭部分のみを集めて作った本なのだ。
ポータルサイト「デイリーポータルZ」にて毎回テーマを決め、一般の方から作品を公募している。そしてその一般公募の中から優秀な作品のみを集めて作った本なのだ。なんという型破りな発想だろうか。
物語の冒頭というのはこれから始まる物語の世界へ読者を引き込む大切な一文である。
そこを読んだだけで、この本を読むかどうか判断するといって過言ではない。それほどに大切なところだ。
この本はその冒頭のみが載っているため、その後のストーリーを読者が想像し、楽しめるという見方も出来る。いわば、無限のストーリーが詰まっている。
ここで、本書から僕がいいと思った書き出し小説を紹介したい。
【無職】
信じてもらえないかもしれないが、本当に家事を手伝っている。
【中学生】
深夜、ストリートビューで佐々木さんの家へと向かった。
【サル】
初めての混浴に足を踏み入れた。
サルがいた。
あえて、どの作品にも僕のコメントは入れないでおこうと思う。
コメントを入れてしまうことで作品が寒くなってしまうし、独特のニュアンス、雰囲気が崩れてしまう。絶妙なバランスの上にどの作品も描かれていると感じる。
パラパラと読んでみるだけでも楽しめるので、
本屋での立ち読みで済ませるのでもいいと思う。
一度手に取ってもらいたい。
編集後記
どの作品もキャッチコピーのようであり、芸術性が高い。
本の帯にはコピーライターの糸井重里さんからのコメントが載っている。
「だめだ!思い出し笑いの質量がハンパじゃない!」
まさにその通りだと思う。