世の中には作家に向いている人と向いてない人がいるようだ。
どのような人が向いているのかと言うと、グダグダと一つのことをああでもない、こうでもない、とトロトロ考えられる人である。
以前、村上春樹さんの『職業としての小説家』を読んだ際にその様な話が出てきた。
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確かに本を読んでいると、何でもない日常の一部をうまい具合にびよーんと引き伸ばし、普通なら数秒で過ぎることを暫くの間くどくど述べている。
淡白過ぎる文章より、場面、場面の解説が長く、心情や何かしら付随するエピソードが添えてある方が読みやすい。
日常の会話であれば、短く端的に伝える方が分かりやすいが、文学の世界となると、ある程度の無駄が求められるようになる気がする。
最近読んだ『行かずに死ねるか!』(幻冬舎文庫)。
どのような本かと言うと、自転車で世界一周を7年ほどの年月を掛けて達成したノンフィクションの話である。
行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅 (幻冬舎文庫)
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7年もの長期間であるため、かなり様々なイベントが盛りだくさんではあるのだが、一つ一つのエピソードが、かなり手薄い。
面白いのだが、どうも物足り無さがある。
日記の様に淡々とした感じがあり、もっと、こねくり回したような文章で読みたかったなぁと思った。
原稿の枚数に制限があり、本当は未収録となったストーリーなどがあるのかもしれないが、ちょっと残念であった。
そのとき、ああ、作家とはグダグダ考える事が必要なんだなと改めて感じさせられた。
思い返してみるも、自分が好きな作家の文章は大抵、「そんなによくもまあ一つの事を引っ張って語ってくねえ」という気持ちにさせる書き方をしている。
そして、総じて文章が上手い。
長いのにあまり中弛みなく、読み手のリズムを崩させないような文章で、読んでいて心地良い。
世界をじっくり見ているというか、ゆっくり考えながら生きている人が作家になれるんだろうなーと思った。