遺伝子の優劣が人生を決めてしまうのか?
遺伝子操作により、欠陥のない人間「適正者」を選別することが可能になった近未来の物語。
自然妊娠で産まれた主人公、ビンセントは産まれた時から限界値を伝えられ
何に対しても「お前には無理だと」伝えられる。
自然妊娠の人間は、適正者に反し「不適正者」との呼称でよばれている。
遺伝子操作により万能な力を手にしながら誕生した弟は、身長、体力、知力も兄ビンセントを上回る。
ビンセントの幼い頃からの夢は「宇宙飛行士」。
しかし、適正者のみが就ける仕事だった。
両親からは「お前には無理だ」と伝えられ続けるも、ある出来事をきっかけに可能なのではと考えが変わる。
弟と海にて遠泳の体力勝負を行ったときのことだ。
いつも弟に負け続けていたが、ある日のこと、弟に勝つことが出来た。
力尽き、溺れかけていた弟を救い、岸まで泳いで運んだのだ。
運命は、遺伝子により決まるのではない。自分で変えることが出来るのだ。
こう確信した。
ビンセントは実家を飛び出し、ひとりで生きることを選択する。
様々な職を転々とするうちに、宇宙局「ガタカ」の清掃員の職に就く。
間近で宇宙飛行士たちの姿を見ながら働き、幼い頃からの夢ばかりがつのっていく。
と、ここで、またとないチャンスが訪れる。
DNAブローカーなる闇の仕事人から「適正者」の生体IDを入手することができたのだ。
しかも、とんでもなく優秀な人間のDNAを!
それは、不慮の事故により脚が動かなくなってしまった元水泳選手ジェローム・モローのDNAだった。
事故の記録は公にはされていないため、その日を境にビンセントはジェロームとして生きることを選択する。
晴れて、宇宙局「ガタカ」の職員となることができたのだった。
宇宙局「ガタカ」では様々な生体IDチェックが行われているため、採血、検尿をはじめ様々な偽装行為が必要だった。
ジェロームと同居し、彼の生活費を提供する代わりに血液や髪の毛などのサンプルを提供してもらう。
ビンセントは、自分の体毛や垢などが宇宙局に残らないようにと徹底的に自身の体を含め清潔に保つ日々。
疑われることなく、優秀な職員として働き続けたビンセントはついにタイタン探査船の宇宙飛行士に選ばれたのだった。
何もかもが順風満帆に思えたが、最悪の事態が発生する。
何者かの手によって職場の上司が殺されてしまった。
警察の捜査により事件現場で発見されたまつ毛が「不適正者」ビンセントのものであると発覚。
数年前に突如として消えた元清掃員のビンセントの毛が、なぜこんな所にあるのか。
容疑者としてビンセントの捜索が始まり、徐々に正体が割られていく。
ジェロームとしてどうにか振る舞い続けるも、限界はある。
「もうダメなのだろうか」というほどに追い詰められた直後、真犯人が発覚。
犯人は宇宙局長ジョセフであった。
数々の難局を乗り越え、ようやく宇宙船に乗り込めると思った直前、抜き打ちの生体IDチェックが行われる。
検査を担当した医師は、ビンセントが「不適正者」であるとの事実を知っていた様子で「不適正者である私の息子は、あなたのファンだ」と告げ、「適正者」と結果を書き換えてくれたのだった。
ビンセントの船が地球を飛び立つ同時刻に、本物のジェロームは自らの命を絶つ選択をしていた。ビンセントには「旅に出る」と告げていたが、自分の人生をビンセントへと譲る形での幕引きとなった。
運命を決めるのは、遺伝子か意志か?
運命は、未知数であり定められたものでないといえる。
産まれ持った遺伝子や環境、能力だけですべてを決めてしまうのは実にもったいないことである。
自分で限界を作ってしまってはその先へと進むことができない。
優秀な遺伝子を持ちながらも、優勝ができず常に2位止まりだった元水泳選手のジェロームは自身に絶望していた。
劣性遺伝を持ったビンセントは、両親や弟から「お前には無理だ」と言われ続けたが、最後は自身の夢を叶えることができた。
人生は自分の力でいくらでも変えることが可能であり、何もかもを外部の責任にしてしまうのは間違いなのではと考えさせられる。